2005年10月29日(土) ある海外テレビ局で編成マネージャーをされているAさんが来日。彼女には、学位留学の経験と20年以上の業界経験があります。僕が入社以来、めちゃめちゃお世話になっているクライアントさんの一人。 食事を挟んで8時間も続いた打ち合わせの終盤。「実は会社に辞表を提出したんですよ」とAさんが話し始めました。 一般的にテレビ局には、大きく分けて4つのセクションがあります。 @放送技術 A制作 B編成 C営業 今回来日しているAさんの担当業務は、Bの編成。視聴率の取れる番組を購入し、オーディエンスの視聴スタンスに合う番組スケジュールを組む仕事。視聴率が悪ければ、営業から悪く言われます。スポンサーが付きにくくなりますからね。 編成は、良い視聴率を確保して当たり前。ところが、良い視聴率をはじき出し大きな広告主が見つかっても、その評価は最終的に契約を結ぶ営業セクションが横取り。「編成の仕事は評価されない」Aさんはため息混じりにこう話してくれました。 もちろんテレビ局によっては、編成の業務を十分に理解し、その評価方法もオープンで公正です。でも、Aさんの局はChannel Director(チャンネルの総責任者)が営業出身で、編成の立場を反映させた評価がなされていないそうです。 仕事にストレスはつきものだし、気が合わない人もいる。もちろんAさんはそんなことは百も承知で、どんどん視聴率を上げ、営業の仕事までこなして会社に利益をもたらしてきました。ところが、その評価は何年も平行線。しかも仕事ができ、役職もあり、目立つ立場にいるため、悪口すら言われることがあるそうです。 長い時間と膨大なお金をかけて留学し、血の滲む思いをして外国文化と言葉を取得。専攻した放送ジャーナリズムが大好きで、卒業後、自分の国に帰りテレビ局に就職。「評価や結果が出るには時間がかかる」ことを留学で学んだAさんは、納得いかない待遇に耐え20年の経験を積みました。 そしてAさんは、ついに辞表を提出。そのAさんが僕の目を見て、こう話してくれました。 「人生は短いですよ。望む仕事をしていても、その環境に納得がいかないまま続けるのはもったいないじゃないですか。」 Aさんのこのシンプルな言葉に、強烈な説得力を感じました。そしてAさんは続けました。 「でも、辞表は目の前で破かれました。ドラマみたいでしょ(笑)。そして今、もう少し続けてみようと思えるようになりました。なぜなら、やっぱりテレビが好きだから。そして、今のチャンネルに愛着がありますからね」 Aさんの言葉を聞いて、赤く潤んだ両目を見て、僕は思いましたよ。「やりたいことをやるって、やっぱり辛いことでもあるんだ。そして続けることは、もっと辛いことなんだ」って。 Aさんとの打ち合わせを終えて、自分のデスクに戻ったときには夜11時を回ってました。それからメールチェックなどの通常業務。毎日がものすごい勢いで過ぎ去っていきます。 20年後。48才か。ずっと先のことのようで、近い未来のことのようでもあるかな。
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